
お知らせ
2026年9月7日
基本動作をみる②|起き上がりで起きていること(3つのパターン)
※動作には個人差があり、複数パターンが組み合わさることもあります。
はじめに
寝返りで向きを変えたあと、多くの方は「起き上がる」動作へ進みます。
起き上がりは、臥床から座位・立位につながる大事な動作です。
本コラムでは、理学療法士の視点で起き上がりの代表的なパターンを紐解きます。
- パターン① … 側方へ大きく回らず、両肘・前腕で上体を起こす
- パターン② … 側臥位を経由し、片肘〜両手支持で起き上がる
- パターン③ … 下肢をたたみ、側座位(横座り)へ移行して起き上がる
起き上がりのゴールを一言で
仰向け(または横向き)から、上体を起こし、座位など次の姿勢につながる体制へ移ること。
力学的に紐解くと「重心の移動」が行われている動作です。以下重心の位置を意識しながら、動作を確認してもらえると分かりやすいです。
ここでもポイントは、単に「体を起こす」ことではなく、
- 頭・体幹・上肢が連携すること
- 支持基底面をうまく変えながら、安定を保って重心の位置を変えること
です。
支持基底面が広い仰向けから、肘・前腕など狭い支持へ移るため、筋力・可動域・怖さの影響が出やすい動作でもあります。
パターン① 両肘・前腕の支持で上体を起こす
このパターンでは、寝返りのように大きく側方へ回らず、
体の正面側(やや長座位の方向)へ、両肘〜前腕を使って上体を起こしていきます。
腹部や体幹前面のコントロール、肩・肘まわりの支持力、頭部のコントロールが関わりやすいです。
①-1 開始位(仰向け)

仰向けで、上下肢は比較的伸ばした状態。
支持面は背中側が広く、安定しています。ここから「起こす」ための準備に入ります。
①-2 両肘で上体を支える

両肘を床につけ、肘で上体を支えながら体幹を起こし始めます。
頭部と視線も上がり、支持基底面は「背中全体」から「肘まわり+下肢側」へ変化していきます。
肩や肘の痛み、肩関節伸展や体幹筋力の低下がある方は、この段階で止まりやすいです。
①-3 前腕支持へ進む

肘支持から前腕支持へ進み、上体がさらに起きてきます。
支持基底面は小さく、重心の位置が高くなり、重力の影響が強くなっている状態です。
ここまで来ると、次の動作(手の位置の付け替え、膝立ち・端座位への移行など)につながりやすくなります。
現場で見るポイント
- 頭は体幹と一緒に起きてきているか(あごだけ突き出していないか)
- 両肘・前腕で床を押せているか、片側だけに偏っていないか
- 肩や肘に痛み・力みが出ていないか
- 息を止めて一気に起きようとしていないか
パターン①がつらくなりやすいとき
- 肩肘関節の伸展、腹筋・体幹前面の筋力低下
- 肩・肘の痛みや可動域制限
- 首のコントロールが難しい、めまい・不安がある
- ベッドが柔らかすぎて肘が沈む など環境要因(床反力を上手く利用できないため、さらに力を要する)
介助では「全部起こす」前に、肘をつける位置の誘導や、頭の方向を先に伝える声かけが一つの方法となることがあります。
パターン② 側臥位を経由して起き上がる
このパターンでは、まず向きを変え(寝返りの要素)、側臥位から片肘・手の支持で上体を起こしていきます。
パターン①より側方の回旋を使い、片側の上肢で押し上げる要素が強くなります。
前回の「寝返り」で見た動きとつながりやすいパターンです。
②-1 開始位(仰向け)

仰向けから始まります。ここからの最初の変化は、上体をまっすぐ起こすのではなく、向きの変更です。
②-2 向きを変える準備(頭部・上肢)

頭部や上肢が動き、側方への回旋が入り始めます。
寝返りと同様に、視線・腕の使い方がきっかけになることが多いです。
②-3 側臥位+片肘支持

側臥位となり、下側の肘・前腕で上体を支えます。
反対側の手を床につけ、次の押し上げの準備に入る段階です。支持基底面は側面〜肘まわりへ移り、重心の位置は胸のあたりに移動してます。
②-4 両手支持でさらに起き上がる

両手(または片手中心)で床を押し、上体をより起こしていきます。
ここから端座位や膝立ちなど、次の姿勢へとつながります。
現場で見るポイント
- 側臥位までスムーズか(寝返りの問題が先に出ていないか)
- 下側の肘は安定して床を押せているか
- 上側の手が適切な位置についているか
- 肩・手首・腰に痛みや力みが出ていないか
パターン②がつらくなりやすいとき
- 寝返りの段階で回旋が難しい
- 片側の肩・肘の痛み、支持力不足
- 側臥位での不安定さ・怖さ
- ベッド幅が狭く、側方への動きが取りにくい
パターン③ 下肢をたたみ、側座位へ移行して起き上がる
このパターンでは、側方へ向きを変えたあと、脚を伸ばしたまま起こすのではなく、
膝を曲げて下肢をたたみ、いわゆる側座位(横座り)に近い姿勢へ移ります。
両手で床を支えながら上体を起こし、次の動作(膝立ち・立ち上がりなど)へつなぎやすい形です。
パターン②と似て側方を使いますが、下肢のたたみ込み(屈曲)がより明確な点が特徴です。
③-1 開始位(仰向け)

仰向けから始まります。ここから側方への回旋と、下肢の屈曲・たたみ込みが加わります。
③-2 側座位へ近づく(下肢を交差・屈曲)

臀部〜大腿の側面を床につけ、膝を曲げた下肢が体のそばに集まってきます。
両手は床を支え、上体を起こした状態です。支持基底面は「側面+手+たたんだ下肢」へ移ります。
支持基底面は小さく不安定な状態な反面、次の動作に移行しやすい姿勢になります。
③-3 側座位で安定し、次の動作へ

両膝がよりそろってたたまれ、側座位としてまとまった姿勢です。
床を両手で押すプッシュアップの力が要求されます。(大胸筋・上腕二頭筋等)
ここから手の位置を変えたり、膝立ちへ進んだりと、起き上がりの後半〜立位への入口になりやすいです。
現場で見るポイント
- 膝・股関節は曲げられてたためているか(痛みで脚が伸びたままになっていないか)
- 両手の位置は安定して床を押せているか
- 側座位でバランスを崩していないか
- 腰や股関節に無理なねじれ・痛みが出ていないか
パターン③がつらくなりやすいとき
- 股関節・膝の可動域制限や痛み
- 側方への回旋が難しい(寝返りの問題)
- 手の支持力不足、手首の痛み
- ベッド上で下肢をたたむスペースが足りない
3パターンを並べてみると分かること
パターン | 主な道筋 | 動きのイメージ |
|---|---|---|
① | 両肘・前腕で正面寄りに起こす | 上から起こす |
② | 側臥位 → 片肘・両手で起こす | 横を経由して起こす |
③ | 下肢をたたみ側座位へ | たたんで横座りから起こす |
現場では「この人は①だけ」と決まっているわけではなく、
体力や痛み、ベッド環境によって選びやすいパターンが変わります。
また、②の途中から③の側座位へ入るなど、組み合わせもよく見ます。
大切なのは正解を一つに決めることではなく、
「今、どのような方法で起きようとしているか」「何がどこまで出来ているか」「何が原因で止まっているか」を見ることです。
おわりに
起き上がりは、寝返りの延長でもあり、立位や座位への入口でもあります。
正面寄りに起こすのか、側臥位を経由するのか、下肢をたたんで側座位へ進むのか。
この視点があるだけで、声かけや介助の的確さが変わります。
「起きられない」ときに、寝返りの問題なのか、起こし動作の問題なのか、下肢のたたみ込みの問題なのかを分けて見ることで、その方の状態に合わせた介助を考えやすくなります。
株式会社じけい会では、訪問マッサージ・訪問鍼灸の現場でも、理学療法士の視点を大切にしながら、日常生活動作に配慮した関わりを心がけています。

